神殺しのクロノスタシスⅣ
「え?賢者の石の欠片が足りない?」

「あぁ」

聖魔騎士団に、珠蓮のことを話し。

再び、イーニシュフェルト魔導学院に戻ってきて。

早速、バラバラになっていた賢者の石の欠片を一つに戻そう…としたところ。

珠蓮から、衝撃の事実が知らされた。

なんと、石の欠片が足りないと言うのだ。

「ちゃんと欠片は十個あるのに…何で…」

俺が呆然とそう呟いても、事実は変わらない。

この中で唯一、賢者の石の魔力を扱える珠蓮が、バラバラにされた欠片を一つに「修復」したが。

現れたのは、まるで猫に一口齧られたかのような、一部が凹んだ水晶玉。

欠片のときに比べると、一回りも二回りも大きくなっているけれど。

それだけに、凹んで欠けた部分が目立つ。

「シルナ!欠片は十個じゃなかったのか?」

「え?あ、ご、ごめん。十個じゃなかったみたいだね。私も憶測だったから…」

どうやら、シルナの見通しは甘かったらしいな。

「全くこれだから…老人の言うことは当てにならないんです」

イレースにもチクチク言われてる。

半泣きのシルナである。

それはともかく。

「つまり、あと一つ、賢者の石の欠片が何処かにあるってことか…」

「じゃあ、また異次元世界に行くの?」

と、尋ねる令月。

「僕、もう一回行っても良いよ」

「やだよ。俺が行く。あの世界のやり口はもう分かったから、次はスマートに帰ってくるよ」

張り合う元暗殺者組。

お前らな。

「馬鹿言うんじゃない。勝手に異次元世界に飛び込んで、帰ってきてから拷問されたこと、もう忘れたのか」

「え?うん」

もう一回やろうか?

駄目だ。こいつらの中では、逆さ吊りにする程度、拷問のうちにカウントされてない。

「勝手に行かなきゃいーんでしょ?今度は、ちゃんと宣告してから行くよ」

そういう意味じゃないんだよ。

宣告してから行くなら良い、なんて一言も言ってない。

宣告しても駄目に決まってるだろ。

「とにかくお前らは駄目だ。行くなら、俺達大人が行く」

もう一度、あの摩訶不思議なくそったれ世界に行くと思うと、気は進まないが。

それが賢者の石を取り戻す為なら…。

何より、他の誰かを行かせるより、自分が行った方がマシだ。

「…議論しているところ悪いが」

と、珠蓮が口を挟んだ。

「異次元世界は、もう存在しないぞ」

…何だと?
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