神殺しのクロノスタシスⅣ
勿論、珠蓮は聖魔騎士団の人間ではないので、『サンクチュアリ』新本拠地への突入に同行する義務はない。

しかし、本人が強く希望したので、今回は彼も突入メンバーに加わっている。

何故珠蓮がついてきたかと言うと…言うまでもなく。

『サンクチュアリ』に、不肖の弟子ミルツ・シュテインがいるかもしれないからだ。

珠蓮は、裏切りを犯した弟子に会いたがっていた。





「…本当に良いのか?珠蓮」

俺は突入前、珠蓮にそう尋ねた。

「何が?」

「『サンクチュアリ』に、お前の弟子がいたとして…。…会うつもりなのか?」

「当然だ」

何を当たり前のことを、と言わんばかりだが。

それが何を意味するか、分かっているのだろうか。

裏切った者と裏切られた者が邂逅して、心穏やかでいられるはずがない。

お互いにな。

しかし。

「俺は確かめなけばならない。ミルツが何故裏切ったのか。本当に裏切ったのか…。その真意を」

「…お前が傷つくだけなんじゃないのか?」

「そうかもしれないな。だが、それで真実が明らかになるなら、本望だ」

「…そうか」

そこまで腹を括ってるんなら、もう余計な口は挟まないよ。

「それじゃ…行くか」

鬼が出るか、蛇が出るか。

魔導師排斥論者が出るか、ってところだな。
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