神殺しのクロノスタシスⅣ
…ともかく。

「相手がマジで魔導師排斥論者なら、俺達がいくら説得しても、聞く耳持ってもらえんぞ」

「あ、羽久さん無理矢理話変えようとしてるー」

ナジュ黙ってろお前馬鹿。

「ここにいるのは、皆魔法使える人だけだもんね…。魔導学院なんだから、当たり前だけど…」

「シルナの言葉なんか、いくら説得しようが、まず言葉を聞いてももらえないだろうしな」

実際、シルナが何を言っても、「詐欺師!ペテン師!」だったもんな。

俺だってイレースだって天音だってナジュだって、魔導師なんだから。

俺達がいくら、何を言おうと。

言葉での説得は、無理に近い。

だって俺達の言葉は、全部魔導師の言葉なんだから。

とても、あの頑固なエヴェリナ母に届くとは思えない。

「…」

一同が、無言になったのを見て。

何を思ったか、令月が、懐から小刀を取り出した。

「…やっぱり消す?」

おい、何言ってんだやめろ。

「俺も加勢するよ」

すぐりが、両手にピン、と糸を張った。

やめろって。

お前らに狙われたら、俺達だって生きて帰れるか。

消す?じゃねーんだよ。アホの発想。

「消す以外の方法を考えるんだ」

「…そんなこと言われても…」

「あ、良いこと思いついた『八千代』」

困りかけた令月に、すぐりが何やら名案を思いついた。

何だ?

「捕まえて、洗脳すれば良いんだよ。檻の中に入れて、『お前は魔導師を崇拝する、お前は魔導師を崇拝する』って延々聞かせてさ。簡単でしょ」

「成程、さすが『八千歳』。頭良い」

頭おかしい、の間違いだろ。

何を考えてるんだ。

こいつらさっきから、発想が暗殺者過ぎるぞ。

「駄目に決まってるだろ、馬鹿かお前らは」

ろくな案を考えやしない。

学生寮に追い返すぞ。

…すると。

「全く皆さん、不甲斐ないですねぇ」

これまで、横槍を入れる以外は黙っていたナジュが、やれやれ、とばかりに言った。

…何だと?

「じゃあ、お前には何か良い案があるのか?」

「まぁまぁ、僕に任せてくださいよ。ここは、イーニシュフェルト1のイケメンカリスマ教師の出番ですね。…あ、羽久さんにも協力してもらうので宜しく」

「…」

…なんか、俺だけ巻き込まれんの、すげー嫌なんだけど。

しかし現状、何の打開策もない(元暗殺者組の提案は論外)ので、否が応でも、ナジュの提案に乗るしかなかった。
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