神殺しのクロノスタシスⅣ
シルナ…。残念だったな。

良い夢見れたか?

「何で!?何でなの酷いよ!夢のうきうきハロウィンパーティが!」

本当に夢だったのか。

「黙りなさい。許すはずがないでしょう、そんなお金の使い方。学院の資金を勝手に隠し持って」

「あぁっ!」

イレースは、シルナが持っていた、奨励金云々の書類を取り上げた。

子供から玩具を取り上げる母親の図。

ただし今回の場合、親と子の年齢が逆だな。

「どうして!?ハロウィンしようよ!折角臨時収入入ったんだから!」

「学院に奨励金が出たのなら、それはあなたではなく、学院のお金です。あなたが自由に用途を決めて良いはずがないでしょう」

その通り。

「でも私学院長だもん!たまには自由に決めて良くない!?」

職権乱用。

「駄目に決まってます。確かにあなたは学院長ですが、お金の管理をするのは私ですから」

ごもっとも。

良いぞイレース。その調子で追い詰めていけ。

「じゃあ私が管理する!私がお金の管理するよ!」

「馬鹿ですかあなたは。誰がボケた老人に金勘定を任せるんです。却下します」

「酷いぃぃぃ!」

残念だったな。

恨むなら、イレースに学院の財布を渡した、過去の自分を恨むと良い。

すると。

「…でも、それって所謂あぶく銭でしょう?だったら、いっそパーッと使ってしまうのもアリだと思いますけどね」

思わぬところ(ナジュ)から、シルナに援護射撃。

おいナジュ。お前、イレースを敵に回すつもりか?

さては、さっき脳天拳骨食らったことを根に持ってるな?

「ほら!ナジュ君もそう言ってる!」

援護を受けたシルナ、途端に活性化。

「個人が得たあぶく銭なら、好きに使えば良いでしょう。だからって菓子に注ぎ込むのは、馬鹿の極みだと思いますけどね」

しかし、敵の数が増えようとも、全く動じない鋼鉄のイレースである。

いやー、我が学院の経理担当は強いなー。

頼もし過ぎるだろ。

「しかし、このお金は個人ではなく、学院が頂いたもの。パーッと使うなんて有り得ません。そして我が学院は、そこの馬鹿な学院長のせいで、毎年自転車操業なんです。そこの馬鹿な学院長のせいで」

大事なことだから、二度言いました。

「予算なんて、いくらあっても足りやしない。ハロウィンパーティ?冗談はその顔だけにしてください」

「…イレースちゃん…。顔…顔は関係なくない…?」

半泣きのシルナだが。

俺は援護しないぞ。

イレースが度々言ってるが、学院ってのは慈善事業じゃない。

生々しい話だが、学院として成り立つには、それなりのお金が必要だ。

そのお金は、いくらあっても困ることはない。

ましてや、臨時収入が入ったのならなおさら。

そのお金は、来年度の予算に回すべきだ。

いつ何があるか分からないもんな。
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