神殺しのクロノスタシスⅣ
「綺麗な花には、棘もあるし、毒もあるんだよ」

おっさん小人は、へらへら笑いながらそう言った。

シルナに止められていなかったら、横っ面ぶん殴っていたところだ。

「…君達は…何が目的なの?」

シルナは、角が立たないよう、恐る恐る尋ねた。

すると小人共は、余裕の笑みで交互に答えた。

「僕達七人の小人は、白雪姫を目覚めさせることが目的なんだ」

「だけど白雪姫は空っぽで、今はまだ目覚めることが出来ない」

「白雪姫を目覚めさせるには、僕達が持つ、この小瓶をいっぱいにしなくちゃならない」

「白雪姫が目覚めるには、七つの感情が必要なんだ」

「君達には、その手伝いをしてもらうことになるよ」

やっぱりムカつくから殴りたい。

我慢だ俺。必死に我慢しろ。

何で上から目線なんだよ、こいつら。

「小人一人に付き、契約者は一人から二人」

「僕達に足りない感情を、その契約者達に教えてもらう」

「小人達それぞれのやり方でね」

「そうして小瓶が感情でいっぱいになったら、契約は解かれる」

「そうやって、七つの小瓶がいっぱいになったとき、白雪姫は目を覚ますんだ」

「…さっき君達、七日以内に達成出来なかったら、毒で死ぬとか言ってたけど…」

シルナが口を挟むと、小人共は、

「うん、死ぬよ」

「僕達に感情の一つも教えられないなら、死んだ方が良いしね」

相変わらず、クソ生意気に答えた。

なんてことを、へらへらしながら言いやがる。

何様だこの野郎。

「え…!じゃあ、それって…今、もう既に、イレースさんは契約してるんだよね?」

ぎよっとした天音が、青ざめて小人に尋ねた。

そうだ、イレースの指に嵌った、茨の指輪。

確か、あれが契約の証だとか何とか。

「そうだよ。その子は、白雪姫の棺桶の蓋を開けてくれたからね」

「一番に契約してあげたんだ」

「僕に恐怖の感情を教えてよ。七日以内にそれが出来ないと…君は死ぬよ」

唐突に、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされ、愕然とする俺達とは裏腹に。

本人の望まぬまま、勝手に契約者にされたイレースは。

「成程。私はこれから、あなたの感情の小瓶とやらをいっぱいにして、契約を履行しなければならない。さもなくば死ね、ということですか」

「そうだよ。物分かりが良いね」

いや、ちょっと待てふざけんな。

発言には気をつけろ、と言われたが。

さすがにここいらが限界だった。
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