神殺しのクロノスタシスⅣ
「ま、まぁ顔を上げてください、お二人共」

シュニィが、何とか笑顔でそう言った。

「ごめんな…。こんな下らないことで…」

「いえそんな。下らなくなんてないですよ」

正直に言って良いんだぞ、シュニィ。

身から出た錆だろうが。そんなことに協力してられるか、自分達だけでやってろ、と。

そう言われても仕方ないとは思ってるよ。

でも、これだけは言わせて欲しい。

俺達だって、望んでこんな事態に直面した訳じゃないんだよ。

「真面目な話、イーニシュフェルトの里の遺産というのも、気になりますしね…。その…『白雪姫と七人の小人』の封印が解かれてしまったなら、他の封印も解かれている可能性があるということですよね?」

そんな恐ろしいことを言わないでくれ。

「確かに…その可能性はあるね」

「じゃあ、また命懸けの何かを要求されるってことが…?」

「いや、そんな…。全てがそんな、危険な魔法道具って訳ではないから…」

そうであってくれよ、本当に。

こんなこと、金輪際御免だ。

まだ『白雪姫と七人の小人』の攻略も出来てないっていうのに。

「とにかく、ここで議論していても仕方ないですね…。まずは、その白雪姫を何とかしなくては。すぐに、イーニシュフェルト魔導学院に向かいましょう」

「…協力、してくれるのか?」

俺は、恐る恐るそう尋ねた。

門前払い食らっても仕方ない、とさえ思っていたのだが?

「?当たり前です。学院長先生や羽久さん…イーニシュフェルト魔導学院の皆さんが困っているのに、見過すことは出来ません」

きっぱりと言ってのけるシュニィ。

泣きそうなくらい有り難いが、しかしそんな風に快諾されてしまうと、やはり罪悪感が。

「でも…下手したら死ぬかもしれないんだぞ」

小人を満足させられなかったら。

契約から七日後、毒で殺される。

その危険を冒してまで…。

「それは、どの任務でも同じことでは?何なら、命の危険は『アメノミコト』と戦ったときの方が大きかったように思いますけど」

それは一理ある…かもしれない。

あの小人と『アメノミコト』を比べたら…。

…うん、確かに。

まだ、小人の方が生き残れそうではある。

威圧感が違うよな。

「でもさ…こんな馬鹿馬鹿しい魔法道具の為に…」

「命が懸かってるのに、馬鹿馬鹿しいも何もありませんよ」

でもさ。

こんなことでもし死ぬようなことがあったら、死んでも死にきれんだろ。

それなのにシュニィは、協力してくれるって言うのか?

「何より、恩人が困っているというのに、見過ごすことは出来ません。…皆さんも、そうですよね?」

シュニィは、一緒に聞いていた、聖魔騎士団の仲間達を振り返った。
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