神殺しのクロノスタシスⅣ
「何よ、あなたまで言いくるめられて!」

自分も言いくるめられている自覚、あったのか?

「さっきから聞いてれば、自分達に色の良いことばかり言って。そうやって、結局なぁなぁに済ませようとしてるんでしょ!?」

おっ、よく気づいた。

良いぞお母さん。詐欺師の手口にハマるな。

「私は騙されないわよ!御託は良いから、さっさと退学届を出しなさい!」

交渉は決裂、と言ったところか。

しかし。

「でもですね、奥さん。お嬢さんの人生は長いんです。一度傷ついてしまった学歴は、取り戻せませんよ?ましてやこの思春期の時期に…」

余程、このエヴェリナ母の中では、先程ナジュが言った「学歴に傷がつくこと」を気にしているらしく。

なおも、そこを起点にナジュが攻め込もうとするも。

「余計なお世話よ!うちの問題に、教師ごときが首を突っ込まないで!」

そんな自分の迷いを晴らすように、怒鳴り散らすエヴェリナ母。

駄目っぽいぞ、これ。

すると。

「お、お前やめないか。折角先生方が来てくださったのに…」

「あなた、そんな弱気でどうするのよ!エヴェリナが、詐欺師に育てられようとしてるのよ?それを止めないなんて、あなた父親なの!?」

「で、でもな…エヴェリナの将来なんだから、エヴェリナ本人が…」

「あの子はまだ子供なんだから、親が軌道修正するのは当然でしょ!」

「そんな。エヴェリナだって、小さい子供じゃないんだから…」

「あなたもエヴェリナも騙されてるのよ!今何とかしないで、エヴェリナの将来が台無しになったらどうするの!?」

夫婦喧嘩、勃発。

「…親のエゴですよねー」

「…全くだな…」

を、傍目に俺達教師陣もひそひそ話。

すると、そのときだった。

「お母さん!お父さんも、やめて!」

恐らく、上で聞いていたのだろう。

耐えきれなくなったエヴェリナ本人が、現場に駆けつけてきた。
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