神殺しのクロノスタシスⅣ
これまでは、俺達の努力次第で、七日間の期限を待たずに解放されていたが。

今回は違う。

こいつら今、七日間ずっと、って言ったぞ。

つまりクュルナとエリュティアを、七日間ずっと拘束し続けるってことか?

「そんなことしなくても…教えれば良いんだろう?お前達が望む…怒りや悲しみを」

「悪いけど、僕達には僕達のやり方があるから」

「そうだよ。君らに勝手に決められる筋合いはないね〜」

ムカッ。

それを言うならこっちだって、お前らに、勝手に決められる筋合いはないっての。

調子に乗りやがって。

「それに、他の小人の試練より楽だよ?」

「だって、君達は何の努力もしなくて良いんだから」

「そうだよ。ただ怒って、悲しんでくれれば良いだけ」

「その為のお膳立ては、僕達がしてあげるからね」

…何だと?

言ってる意味が、よく…。

と、思ったそのとき。

「わーっ!きゃーっ!」

シルナが、素っ頓狂な悲鳴をあげた。

何事かと思って振り向くと。

ケーキボックスを持ったシルナが、床にすってんころりんと転んでいた。

ボックスから飛び出たケーキが、べちょっ、とクュルナの服と髪を汚していた。

…何やってんだ?

一瞬にして、クリームまみれになるクュルナ。

「何をやってんだよ、この馬鹿シルナは?」

「ご、ごごごごめんクュルナちゃん!えぇ!?ちょ、私も分からないんだよ!な、何だか、いきなり足元が滑って…!転んだと言うより、転がされたみたいな…」

はぁ?何だその言い訳は。

「し、しかもそのケーキ…エリュティア君にあげようと思ってた奴…!」

そうなの?

エリュティアにあげるはずのケーキが、ぐちゃぐちゃになって潰れ、クュルナの服を汚した。

エリュティアも、クュルナも不幸になる展開である。

更に。

「で、でもお茶は無事だから!お茶飲んで落ち着こっ、ね?美味しい紅茶淹れたから、ほら」

シルナが、慌ててフォローの為に紅茶のティーカップを二人の前に出す。

が。

クュルナがティーカップを手にした瞬間、落としてもいないのに、パリーン、と割れるティーカップ。

熱い紅茶の水が、クュルナの袖をびしゃびしゃに濡らす。

そして、一方のエリュティアは。

「むぐっ…!?げほっ!!げほっ、えほっ…うぐっ…えほっ、ごほっ、ごほっ」

紅茶を一口飲んで、盛大に噎せていた。

「え、エリュティア?大丈夫か?」

どうした、器官に入ったか?

「しよっ、げほっ…。ごほっ、し、しおっ」

しお?

「し、塩っ、入ってる。しょ、しょっぱ…。げほっ、ごほっごほっ」

塩!?

紅茶に塩!?

「シルナ!?お前塩入れたのか、エリュティアの紅茶に!」

「えぇぇ!?そんなはず…。…あ!何で!?砂糖入れてたはずなのに…塩になってる!!」

慌ててシルナが引き出しを確認すると、いつもならスティックシュガーが山程入っているはずの場所が。

何故か、スティックソルトにすり替わっていた。

何だスティックソルトって。聞いたことないぞ。

これは…もしかして。
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