神殺しのクロノスタシスⅣ
怒り、悲しみの小人と、クュルナとエリュティアがそれぞれ契約してから、今日で三日目。

俺は、数々の不幸に見舞われるようになっていた。

「髪に絡まってるよ、ガム」

「陰湿ないじめだねー」

「…別にいじめではないけど…」

頭の後ろに手を回してみると、ガムのベタベタが髪に貼り付いていた。

気持ち悪っ…。

無視していようと思ったけど、さすがに無視出来ない。

「あぁ…。あぁぁ〜…羽久…大丈夫?」

シルナが、あわあわしながら聞いてきた。

「大丈夫ではないだろ…」

一昨日、昨日と、こんなことばかりだ。

いや、日に日に酷くなっている。

「羽久、足元汚れてるよ」

令月が、俺の足元を眺めながら呟いた。

そうだよ。知ってる。

「さっき歩いてたら、突き飛ばされて水溜りに足突っ込んだんだよ」

「背中も汚れてるよ」

「さっき外で、泥団子が飛んできた」

もう、いっそコントなんじゃないかと思うよな。

不運とか、そういう次元を越えてるよ。

「可哀想だねー。ガム、俺の糸で取ってあげるよ」

「おぉ…ありがとう」

すぐりが得意の糸魔法を使って、俺の髪の毛にへばりついたガムを、こそげ取ってくれた。

ありがとう。

これで、少しはベタベタが何とかなるだろう。

「元気出して、羽久…!ほら、これ。私の秘蔵のチョコあげるから」

シルナが、お宝のチョコレートをくれた。

「あぁ、ありがとう…」

有り難くチョコレートを受け取って、口に放り込む。

が。

「…!?」

甘いはずのチョコレートは、何故か一口噛むなり、信じられない苦味を感じた。

漢方薬みたいな味がする。何だこれ?

「げほっ…がはっ…」

「え、だ、大丈夫!?」

「にっが…!何だこれ…!?」

一体、何が仕込まれてるんだ?

更に、俺の不幸はこれだけに留まらない。
< 602 / 795 >

この作品をシェア

pagetop