神殺しのクロノスタシスⅣ
この三日間、俺もエリュティアも、ずっとこんな感じだ。

エリュティアは、まだ分かる。

悲しい出来事が、エリュティアの身に次々と降り注ぐ。

そりゃ悲しいだろう。

その証拠に、青い小人の感情の小瓶は、じわじわと、着実に中身が溜まってきていた。

一方、クュルナが契約した赤い小人の、感情の小瓶。

こちらも、同じくじわじわと中身が溜まっているのだが。

何故かクュルナが受けるべき(?)不幸は、全て俺に降り掛かってきている。

てっきり、契約者本人に不幸が起きるのかと思っていたのだが。

赤い小人の不幸の矛先は、何故か常に俺である。

意味分かんねぇ、と最初は思ったものだが。

何のことはない。

クュルナが契約したのは、怒りの小人だ。

契約者本人に不幸が降り注げば、それは契約者を悲しませるだけ。

怒らせることは出来ない。

でも、本人じゃなかったら?

自分の代わりに、親しい他人が不幸を被ることになったら?

その感情は、悲しみではなく、怒りに変わる。

その証拠に。

「…」

見てみろ。この、クュルナの眉間の皺。

美人が台無し。

クュルナも最初は、自分の身に不幸が襲って、それによって怒りを蓄積させられるもの、と思っていたらしいが。

蓋を開けてみれば、不幸な目に遭うのは自分ではなく俺だったと知って、今ではこの不機嫌っぷり。

見事に小人の策に嵌まり、じわじわと怒りゲージが溜まっている。

そりゃまぁ、気持ちは分かる。

自分が不幸な目に遭うだけなら、自分一人の責任でどうとでもなるけど。

自分のせいで他人が不幸な目に遭うと来たら、見過ごせない。

あの赤い小人も、それを分かっててやってるのだ。

で、それが何で俺の集中砲火に繋がるのかは、分からないが。

他の人間が不幸になるだけなら、俺でなくても良いのでは?

何故頑なに、俺ばかりが不幸に見舞われるのか…それは分からないけども。

見たところクュルナには効果抜群なので、小人の策は上手く行っていると言わざるを得ない。

腹立たしいことに。
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