神殺しのクロノスタシスⅣ
「全くです。まさか、魔導学院の生徒の親が、魔導師排斥論者とは」

「珍しいよね…。そういう場合は、そもそも受験もさせてもらえないだろうに」

「受験時にも不満たらたらで、でもイーニシュフェルトなんて所詮受からない、と思って受けさせたみたいですよ、あの母親は」

「安易な考えだな…」

イレース、天音、ナジュ、そして俺は、うんざりとして言った。

シャネオンの駅の爆破事件から始まり。

魔導師排斥論者には、振り回されっぱなしだったな。

まだ夏休み明けだっていうのに、先が思いやられる…。

「…あ!そういえば昨日、シュニィちゃんから連絡が来たんだけど」

と、シルナがケーキを貪りながら、何か言った。

何だよ。泣き止んだのは良いが、ケーキを貪り食ってる姿も、それはそれで気持ち悪いな。

「…羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」

「良いから、シュニィからの連絡は何だよ?」

「なんかね、魔導師排斥運動の中心になってる集団のことが、分かったって」

「そんな重要なことは、もっと早く言えよ!」

「はぶっ!」

ケーキを貪っていたシルナの後頭部に、思いっきりチョップを入れた。

「いたぁ…。舌噛んらぁ…ふぇぇ…」

「だ、大丈夫ですか?学院長先生…」

天音、そいつを甘やかすな。

「…」

見ろ。「そんな大事な報告を、丸一日も黙っていたのか…」と、イレース女王が、ピキピキ血管を浮き立たせている。

杖出しても良いんだぞ。ちょっと電気ショック与えてやれ。

更に。

「まぁ僕は、学院長の心を読んでたので、知ってたんですけどね〜」

「…」

しれっと何言ってんの?このイケメンカリスマ教師(自称)は。

イレース、こいつら二人まとめて、一回丸焦げにしようぜ。

しかし、今はそんなことをしている時間も惜しい。

「何処の誰ですか?その不届き者集団は」

「うぅ、イレースちゃんの顔と声が怖い…」

「…一度黒焦げになった方が、素直に喋れますか?」

イレースの眼光に、殺意が宿った。

やってしまえ。

「言う!言うからやめて!怖い!ますます怖い!」

「なら、早く言いなさい」

「『サンクチュアリ』っていう組織なんだって。恐らくその人達が、魔導師排斥運動の中心にいるんだろうって」

シルナは、イレースの杖が雷を放つ前に、慌ててそう答えた。
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