神殺しのクロノスタシスⅣ
何だかんだ、イレースも逃げられず。

結局、生徒三人を含め、皆でフォンダンショコラパーティを開くことになった。

シルナ、超にっこにこ。

イレースは呆れた様子だったが。

さっきまで疲れ切った顔をしていた天音は、ようやく落ち着いたようだった。

…ん?そういえば。

「天音、何でさっき溜め息ついてたんだ?」

ナジュにいじめられたのか。

だったら、俺が代わりにぶっ飛ばしといてやるよ。

「何で僕がいじめたことになってるんですか…」

うるせぇ。日頃の行いだ。

「え?あぁ…。実はその…これ…」

天音は、おずおずとそれを取り出した。

何かと思ったら。

「あ?それ…」

…名札である。

教員は全員首からぶら下げている、教員用名札だ。

透明なネームホルダーに入れて、青いクリップ付きのストラップで、首にかけるようになっている。

その名札が、何故か。

…凄くキラキラしている。

透明なはずのプラケースに、こてこてとしたシールが貼られ、ラメを散りばめたように名札全体がキラキラ光っている。

更に、青いストラップが取り替えられ、これまたキラキラ光るラメ入りの、カラフルなストラップに変わっている。

そして、本来クリップがついているところに、派手なピンク色のリボンが結ばれている。

何だか…えらく可愛くなってるんだけど…。

「…どうしたんだ?それ…」

「…生徒にね…やられちゃったんだよ…」

力なく答える天音である。

…生徒に…やられた…?

「あ。天音先生も、名札デコったんですね!」

「可愛いですよ〜!」

「似合ってます!」

天音の名札の有り様を見て、三人娘は褒めていたが。

女子生徒に好き勝手やられ、男が持つにしては、いささか可愛過ぎる名札に変えられてしまった天音は、力なく微笑み返すだけだった。

あれを…似合ってると言われても、あまり嬉しくないよなぁ。男としては…。

「いや、天音さんが悪いんですよ?『良いよ』って言ってたじゃないですか」

と、ナジュが天音に言った。

「それは言ったけど…。まさかこんなにされるとは…」

…えーと。

一体、何の話なんだ?
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