神殺しのクロノスタシスⅣ
「どういうことなんだ?天音…」

ナジュにいじめられたのかと思っていたが。

この様子だと、天音をいじめたのは、うちの生徒のようだな。

「一年生の教室の前を歩いてたらね…捕まったんだよ、女子生徒に声をかけられて…」

ほう?

「『天音先生、名札デコっても良いですか?』って、きらきらした目で聞くから…。よく分からなかったけど、良いよって渡したら…こうなった…」

…。

…それは…何と言うか…。

「…大変だったな」

「うん…」

目の前で、女子生徒達がわちゃわちゃはしゃぎながら、自分の名札をカスタマイズしていくのを見て。

多分天音は、気が気じゃなくてハラハラしまくってたんだろうなぁ。

もう、原型が分からない。

「で、その現場に僕も居合わせたんですよ」

ナジュが、そう補足した。

…そういや。

「ナジュ、お前の名札は狙われなかったのか?」

目ざとい生徒達のこと、ナジュが隣にいたなら、ナジュの名札もターゲットにしたずだが。

「あぁ、僕のはもう、既に自分でデコったんですよ。流行の先取りって奴ですね」

そう言って、ナジュはポケットにしまっていた、自分の名札を見せた。

名札の名札は、四隅にきらきらしたちいさなカラーストーンが貼り付けられ、

ストラップの部分は洒落た緑と青の紐に付け替えられ、クリップの部分には、これまた洒落た蝶々のチャームがぶら下がっていた。

何だそれ。お洒落名札。

「生徒からは、超ウケが良いですよ。『ナジュ先生めっちゃお洒落!センスある!』って」

「あ、そう…」

まぁ…お洒落なのは事実だけども…。

「イーニシュフェルト魔導学院の、イケメンカリスマ教師を目指してますからね」

ドヤ顔やめろよ。

「流行の先取りって…。いつからそんな流行が…」

「え、知らないんですか?」

知らないよ。いつの間にそんな…。

「リサーチ不足ですね。生徒の間で流行ってるんですよ。ねぇ?」

ナジュが、フォンダンショコラにぱくついていた三人娘に話を振った。

すると、三人共。

「はい。私もデコってますよ」

「私もです!」

「私も、この間完成したばかりなんですよ〜」

そう言って、それぞれスカートのポケットから生徒手帳を取り出した。

しかしその生徒手帳、俺が普段見覚えのあるものとは、かなり違っていた。

「え?何だそれ…」

「デコ生徒手帳です!」

良い笑顔で答えてくれたところ、悪いんだけど。

何なんだそれは。
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