神殺しのクロノスタシスⅣ
乱れきった…って。

…まぁ、確かに…ダラけた雰囲気ではある、よな。

『白雪姫と七人の小人』の件が終わってからは、特に。

大変だったからなー、あれ…。

「分かってるんですか?今の、この状況が」

「それは…まぁ…」

分かってるよ。

悠長なことをしてる場合じゃないよな。

珠蓮が言っていた、他の魔法道具というのも気になる。

いつまた、あのくそったれ白雪姫に似た、おかしな魔法道具が出てくることやら…。

それを思うと、こうして呑気にしている場合じゃないことは、分かっ、

「ただでさえ、デコ生徒手帳だの、遠足だの、文化祭だので、生徒は気が緩んでいます。この調子じゃ、今学期の期末試験に影響が出ます」

あ、そっちか。

そっちな?はいはい。

あくまでも、気にしてるのは学校行事の方なのか。

まぁ、イレースならそうだろうな。

「おまけに、模範を示すべき教師陣も、この腑抜けた調子…。イーニシュフェルト魔導学院の名が泣きます」

「まぁまぁ、そんな難しいこと気にしなくて良いじゃないですか。イレースさんも、イヤリングつけてみません?馬子にも衣装って言います、いだだだだ」

「誰に衣装ですって?」

ナジュの耳が千切れる。

下手なこと言うからだよ、あいつ。馬鹿だな。

「ここいらで、この乱れきった風紀を正さなければいけません」

「風紀を正すって…。どうやって?また、マラソン大会でもするか?」

確か、年明けにやったよな。前回は。

寒かったなぁ、あれ…。

「いいえ。今回は、全校一斉で…小論文を提出させようと思います」

と、イレースが言った。

全校一斉…。

小論文大会…。

…マジで?

イーニシュフェルト魔導学院では…前例のない催しだ。

「気が引き締まるまで、全員で滝行しろ」とかじゃなくて良かった。

イレース基準に合格するまでに、何人の死者が出るか。

「それって、どうやってやるんだ?弁論大会みたいな?皆の前で発表するのか?」

「そうですね。ですが、発表はクラス単位で良いでしょう」

そうなのか。

「俺はてっきり、学年ごとに代表を決めて、全校で優秀者を決めて表彰…みたいなことをするのかと…」

「そうしても良いんですけどね。文化祭前に、そこまで大規模な学院行事をしてしまうと、今学期の予算に影響が出ます」

成程。

それは大事な問題だな。

「ですから、あくまで発表するのはクラス単位のみ。表彰も特には行いません。目的は小論文の優劣を決めることではなく、小論文を通して、緩みきった風紀を正すことです」

小論文の中身そのものは、特にどうでも良いと。

要するに、ここいらでいかにも面倒臭そうな課題を、全校一斉に出して。

その課題をやらせることで、気を引き締めさせると。

ふむ。イレースの考えそうなことだ。

「勿論この小論文課題、教師陣もやってもらいますからね」

えっ。

…え?俺も?

俺もやるのか?
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