神殺しのクロノスタシスⅣ
何で俺が…巻き込まれなければならないのか…。

俺は、全く風紀を乱している自覚はないのだが?

巻き添え…?巻き添えなのか?

「えー。そんなの面倒くさ、いだだだだ」

「何か言いましたか?この自堕落教師。イヤリングを外しなさい」

「お洒落じゃないですか、お洒落。お洒落もしちゃ駄目なんですか、この学院は」

「当たり前でしょう。学院の本分は勉学。お洒落だの、お菓子だの、浮かれた学院行事だの、言語道断です」

だってさシルナ。言われてるぞ。

さすがのシルナも、イレースの説明を聞いて、チョコレートに夢中になっている訳にはいかなくなったらしく。

青ざめて、チョコレートを持つ手が固まっている。

それでもチョコレートを取り落とさないのは、シルナの強みだな。

「これを機に、教師、生徒共に、気を引き締めて勉学に臨むよう指導することにします」

きっぱりと言い切るイレース。

決意は固そうだ。

こうなったイレースに、「やっぱりやめようよ」とは言えない。

下手なこと言ったら、雷が落ちてきそうだしな。

「あ、あの、でも」

と、天音が挙手すると。

「…何か言いましたか?」

イレースの眼光が、ギラリと光る。

「…ごめんなさい。あの、小論文のテーマを聞きたかったんです。それだけです」

完全に、蛇に睨まれた蛙みたいになってる。

お前は悪くないのにな、天音…。巻き込まれただけだ。

ちょっと質問しただけなのに。

それに、小論文のテーマなら、俺も聞きたい。

大事だぞ、テーマは。

何について書くか、練らなければならない訳だし。

「そうですね…。何が良いでしょう」

どうやら、まだテーマまでは決まっていない様子。

「何か決めた方が書きやすいよね…。何について書くか…」

「そうですね。しかし、敢えてテーマを決めず、生徒の自主性に任せ、各々が考えたテーマで書かせるのも悪くありません」

確かに。

考えるのは大変だけど、生徒の自主性を育てるには、敢えてテーマを決めずに書かせるのもアリ。

その場合、困るのは俺達だけどな。

何について書けば良いんだ…。時魔法概論とか?

それは小論文じゃなくて、普通の論文だな。

しかし。

「はい!自由にテーマを決めて良いなら、私はチョコレートについて書きたい!」

「僕は、ジャマ王国の怪談話について書くよ。皿屋敷が良いかな」

「そーだな。じゃー俺は、さつまいも収穫日記でも書こうかな?」

「それなら僕は、リリスとのイチャイチャ恋愛小説を書きます」

論外な四人がいるな。

お前ら、小論文を何と心得る。

特にナジュ。それはもう実話小説だ。そういうのはよそでやれ。
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