神殺しのクロノスタシスⅣ
アホの四人が、ふざけた意見を出すので。

イレースのこめかみに、ピキピキと血管が浮き出ている。

恐ろしい。

お前ら、まとめて雷に打たれてしまえ。

俺は逃げるからな。俺と天音は。

「…そんなふざけたテーマを、私が許すとでも思ってるんですか」

ひえっ。

「良いでしょう…。あなた方は全員、小論文ではなく反省文を500枚…」

「ちょ、ちょ、ちょっと、まぁ落ち着こうよイレースさん。ね?」

今、500枚って言わなかった?

慌てて天音が止めなかったら、合計2000枚の反省文の山が提出されるところだった。

「皆、真面目に。真面目に考えよう?生徒も教師も取り組める小論文の課題。ちゃんと考えようよ」

「そ、そ、そうだね」

「ふむ、仕方ないですね」

さすがに、反省文500枚は嫌だったのか。

シルナとナジュが、渋々ながら真面目になった。

令月とすぐりは、反省文などどれだけ書かされても怖くないらしく。

ちっとも悪びれもせず、けろっとしていた。

こいつらはそういう奴だよ。

…それにしても。

「生徒でも教師でも書けるテーマか…。難しいな」

そんなに共通する話題って、あるか?

「難しく考えなくて良いんじゃないかな。学院内でのことに限らず…。世間一般的に、小論文の課題に出されるテーマを考えれば…」

「それってどんなテーマだ?」

「えぇっと、そうだな…」

と、天音が考えていると。

「良いことを思いつきました」

イレースが挙手。

おっ、何か思いついたか?

「これまでのルーデュニア聖王国の沿革を振り返ってその評価を下し、それをこれから先の未来、どのように繋げていくか。その展望を自分なりに考察して記し…」

「うーわ、面倒臭っ…。入学試験の小論文で出されたら、めちゃくちゃ面倒臭いパターンの課題ですよそれ」

ナジュ。ずばり言い過ぎ。

気持ちはよーく分かるけど、でも発言には注意しないと、最悪反省文だぞ。

「何です。そのくらい書けるでしょう」

上級生ならともかく、その内容を全校生徒で、と言われるとなぁ。

下級生は泣きそうだ。

あと俺も泣きそう。難しくて。

「いや、羽久さんはまだマシでしょう?僕や天音さん、令月さん達なんて、まだルーデュニアにやって来て、そんなに時間が経ってないんですよ?」

あ、そういえば…確かに。

「それなのに、この国の沿革と言われても…。書くに書けないですよ」

「む…。そうですか。ちっ、良い案だと思ったんですが」

舌打ちはやめようよ。

「ここはさ、もっと自由な発想を取り入れようよ」

シルナが、そんなことを言い出した。

自由な発想?

「どんなだよ、自由な発想って…」

「例えばさー…。これからルーデュニア聖王国に入ってきて欲しい、新しい食文化についてとか!」

それ、お前が新しいお菓子について語りたいだけだろ。

良い笑顔で何言ってんだ。
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