神殺しのクロノスタシスⅣ
「良い大人が、いつまでもぴえんぴえん言うな」
しかも、良い歳したおっさんが。
愛嬌も糞もない。
「だって!あんなに怒るんだよ?イレースちゃん怒りんぼ!」
「確かにイレースの怒りの沸点は低いが、昨日のは完全にお前が悪いだろ」
「うぐっ…」
だって、シュニィ達が苦労して入手した、『サンクチュアリ』発行の新聞を。
コピーとはいえ、折角送ってくれたものを。
鼻紙代わりにして、挙げ句「やべっ」と思って、証拠隠滅に捨てたんだろ?
やることが、もう幼稚園児のそれ。
「歳を取ると、言動が幼稚化するそうですよ。学院長もおボケになられたんですか?」と、昨日散々イレースにチクチク言われていた。
言われるわ。
貴重な資料をお前、鼻水で汚すなんて…。
シュニィに土下座して謝ってこい。
「だからぁ、後でまたもらいに行ってくるってば…」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「うぅ…」
自分が悪いことは分かっているのか、もごもごと口ごもり。
挙げ句、拗ねたようにチョコレートを一粒、口に放り込んでいた。
こんなときでも、チョコレートは欠かさないらしい。
むしろ、「誰も味方してくれなくても、チョコレートだけは私を見捨てないもんね」とか思ってるのかもしれない。
いっそ見捨てられてしまえ。
「あっ。また羽久が、私に失礼なことを考えてる気がする…」
「気のせいだ」
と、喋っていた、
そのとき。
コンコン、と学院長室の扉がノックされた。
「ひょえっ」
シルナは、咄嗟にイレースだと思ったらしく。
慌てて、チョコレートの箱を隠していた。
鬼教官恐怖症か?
「だ、だ、誰…?」
「あの…学院長先生、今、大丈夫でしょうか…?」
扉の影から、姿を見せたのは。
鬼教官イレースではなく。
「え、ユイト君…?」
学生寮で、令月と同室の生徒。
ユイト・ランドルフだった。
ナジュのことやら令月のことやら、何かと部屋割りで迷惑をかけまくっている彼が、こんな朝早くから、何があった?
「どうしたんだ?まだ授業には早いだろう」
「あ、はい…そうなんですけど…。その…」
「?どうした、何があった?」
ユイトは、おずおずと学院長室に入ってきて。
そして。
「実は、さっき…起きたら、ベッド…と言うか、ゴザの上に、令月がいなくて…」
「…」
「代わりに、ゴザの上にこれが…」
と、ユイトは一枚の紙切れを、こちらに差し出した。
そこには、達筆な筆文字で一文。
『探さないでください。』以上。
…家出?
家出の常套句?
「俺が起きたときには、姿がなくて…。いつもなら、スクワットとかしてる時間なのに…」
あいつ、いつもどんな時間を過ごしてんだ。
いや、それより。
「…あの馬鹿…何処に行ったんだ?」
家出か?家出なのか?
そりゃ、家出するような年齢ではあるけども。
しかも。
ユイトに続いて、慌てて学院長室に駆けてきた生徒がいた。
今度は、すぐりと同室のルームメイトだった。
「が、学院長先生!大変です。すぐり君のベッド、じゃなくてゴザの上に、こんなものが…」
彼が持ってきたのは、等身大の人形の雑な白いぬいぐるみ。
顔の部分には、へのへのもへじ。
何故ゴザの上にそれを乗せて、ルームメイトの目を誤魔化せると思ったのか。
用意周到なのかそうじゃないのか、ハッキリしろ。
しかも二人して、ゴザで寝てんの?
ベッド使えって。
「そ、そんな。令月君とすぐり君が…」
「…あいつら…」
二人して…一体、何処に行方を眩ませたんだ?
しかも、良い歳したおっさんが。
愛嬌も糞もない。
「だって!あんなに怒るんだよ?イレースちゃん怒りんぼ!」
「確かにイレースの怒りの沸点は低いが、昨日のは完全にお前が悪いだろ」
「うぐっ…」
だって、シュニィ達が苦労して入手した、『サンクチュアリ』発行の新聞を。
コピーとはいえ、折角送ってくれたものを。
鼻紙代わりにして、挙げ句「やべっ」と思って、証拠隠滅に捨てたんだろ?
やることが、もう幼稚園児のそれ。
「歳を取ると、言動が幼稚化するそうですよ。学院長もおボケになられたんですか?」と、昨日散々イレースにチクチク言われていた。
言われるわ。
貴重な資料をお前、鼻水で汚すなんて…。
シュニィに土下座して謝ってこい。
「だからぁ、後でまたもらいに行ってくるってば…」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「うぅ…」
自分が悪いことは分かっているのか、もごもごと口ごもり。
挙げ句、拗ねたようにチョコレートを一粒、口に放り込んでいた。
こんなときでも、チョコレートは欠かさないらしい。
むしろ、「誰も味方してくれなくても、チョコレートだけは私を見捨てないもんね」とか思ってるのかもしれない。
いっそ見捨てられてしまえ。
「あっ。また羽久が、私に失礼なことを考えてる気がする…」
「気のせいだ」
と、喋っていた、
そのとき。
コンコン、と学院長室の扉がノックされた。
「ひょえっ」
シルナは、咄嗟にイレースだと思ったらしく。
慌てて、チョコレートの箱を隠していた。
鬼教官恐怖症か?
「だ、だ、誰…?」
「あの…学院長先生、今、大丈夫でしょうか…?」
扉の影から、姿を見せたのは。
鬼教官イレースではなく。
「え、ユイト君…?」
学生寮で、令月と同室の生徒。
ユイト・ランドルフだった。
ナジュのことやら令月のことやら、何かと部屋割りで迷惑をかけまくっている彼が、こんな朝早くから、何があった?
「どうしたんだ?まだ授業には早いだろう」
「あ、はい…そうなんですけど…。その…」
「?どうした、何があった?」
ユイトは、おずおずと学院長室に入ってきて。
そして。
「実は、さっき…起きたら、ベッド…と言うか、ゴザの上に、令月がいなくて…」
「…」
「代わりに、ゴザの上にこれが…」
と、ユイトは一枚の紙切れを、こちらに差し出した。
そこには、達筆な筆文字で一文。
『探さないでください。』以上。
…家出?
家出の常套句?
「俺が起きたときには、姿がなくて…。いつもなら、スクワットとかしてる時間なのに…」
あいつ、いつもどんな時間を過ごしてんだ。
いや、それより。
「…あの馬鹿…何処に行ったんだ?」
家出か?家出なのか?
そりゃ、家出するような年齢ではあるけども。
しかも。
ユイトに続いて、慌てて学院長室に駆けてきた生徒がいた。
今度は、すぐりと同室のルームメイトだった。
「が、学院長先生!大変です。すぐり君のベッド、じゃなくてゴザの上に、こんなものが…」
彼が持ってきたのは、等身大の人形の雑な白いぬいぐるみ。
顔の部分には、へのへのもへじ。
何故ゴザの上にそれを乗せて、ルームメイトの目を誤魔化せると思ったのか。
用意周到なのかそうじゃないのか、ハッキリしろ。
しかも二人して、ゴザで寝てんの?
ベッド使えって。
「そ、そんな。令月君とすぐり君が…」
「…あいつら…」
二人して…一体、何処に行方を眩ませたんだ?