陰謀のための結婚
母は穏やかに言う。
「選ぶのは彼よ。香澄との幸せを選ぶのか、別の幸せを選ぶのかの違いだけ。香澄が大切な話を黙っていては、彼は選ぶこともできないわ」
そして母は続けて言った。
「もちろん、香澄にも選ぶ権利はある。彼との幸せを選ぶのか、別の幸せを選ぶのか。ふたりとも不幸を選ぶわけじゃないし、幸せがなくなるわけでもないわ」
「お母さんは、幸せだったの?」
ずっと聞きたくても聞けなかった質問。母を真っ直ぐに見つめて問いかけた。
母は一度目を閉じて、それからゆっくりと口を開いた。
「幸せだったわ。つらいときも、もちろんあったけど、今は幸せよ」