陰謀のための結婚

 そう言うと、母は腕を振り上げて笑ってみせた。

「よーし。お母さんも恋人、作ろうかしら」

「えー。お母さんが?」

「そうよ。お母さん、モテるんだから。香澄より先に結婚したりして」

 冗談ではなく、本当にあり得そうだ。顔を見合わせて、ふたりで笑う。

「これからは無断外泊OK。あ、晩ご飯いるのかだけは教えてね」

「それ、無断外泊って言わないよ」

「それにしても智史さんって、イケメンね。お母さん、ひと目見て気に入っちゃったわ」

「え! お母さん面食いだったの?」

「あら、香澄だってそうだから、智史さんと付き合ってるんでしょう?」

 こんな話が母とできる日が来るとは思わなかった。
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