陰謀のための結婚
真実は突然に

 待ち合わせは、前回利用した西麻布のカフェ。前は緊張もあって、飲み物しか頼まなかったのを悔やんでいたし、今の私なら嘘偽りのない姿で過ごせると思ったから。

 彼にも全部話そうと心に決めた。

 カフェは、道に面している部分が全てガラス張り。内装は、黒い柱と床はブラウンをベースにした板張りで落ち着いた雰囲気。

 置かれているソファは一脚ずつ全て違うのに、統一感があった。

 お洒落な空間に気後れしつつも、中に入る。すると智史さんは既に来ていて、ノートパソコンを開いて見ていた。

「すみません。お待たせしましたか?」

「いや、今、ちょっと自分の中で盛り上がってて、やめられなかっただけ」

「なにか趣味を?」

「いや、前回の出張で視察に行った新しいホテルの建設予定地」

 店員が注文を聞きに来て、会話を中断させる。

 朝食は食べてきたし、十時というランチにも早い時間。

「スコーンと、ブレンドをひとつ」

「俺はエスプレッソを追加で」

「はい」

 智史さんがエスプレッソを注文する姿は、とても似合っている。
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