陰謀のための結婚

 彼との関係や生きている世界の違いは、そんなに容易い話ではないのかもしれないけれど。私は今まで怖がってばかりいた。

 やっぱり飛び込まなければ、どうなるのかわからない。

「智史さんを、もっと知りたいなあと思って」

「いくらでも教えるよ」

「私のことも、聞いてくださいね」

 全部、話すから。それでダメなら、潔く私は智史さんの元を離れるから。逃げるのはもうやめた。

「なにを聞かれるのかな。見合いでよくある、「ご趣味は」のくだり、やっておいた方がよかった?」

 茶化す智史さんに、頬を緩める。

「そういうのではなくて、普通でいいんです。普段の過ごし方とか。いつもの智史さんが知りたいです」

「普段ね。それはそれでなんだか照れるな」
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