陰謀のための結婚
視線を上に向け、彼は思い返しながら、普段の姿を話す。
「そうだな。たいてい土日どちらかでジムに行って、あとは新しくできた商業施設を見に行ったり、話題の宿泊施設に泊まりに行ったり」
人通りの多い週末の六本木通り。彼は肩に掛かるバッグがすれ違う人の邪魔にならないように、私の方へ持ち替えた。
夏らしいグレーのパンツとラフな白いシャツの彼は、爽やかそのもの。その肩に掛かる黒のレザーのトートバッグは、ノートパソコンが入っているためか重そうだ。
「バッグ、大丈夫ですか? 持ち歩くのは大変そうですし、どこかに預けます?」
「これだから、デート慣れしてない男は」
「そんなわけ」
彼なら、引く手あまたのはずだ。
私に変な心配をかけないための発言だろうと考えていると、違う答えを聞く。
「俺、現実主義というか、女に現を抜かす奴は人生を無駄にしてると思ってるタイプ。いや、思っていた、が正しいかな」
目を細めてこちらを見られると、なんだか居心地が悪い。