陰謀のための結婚
ギュッと彼は私を抱き締める。私は胸に痛みを感じて、情けない声が出た。
「やっぱり妊娠できるかどうかは、重要じゃないですか」
香澄ちゃんさえ側にいてくれれば、というのは、やっぱり本心じゃないのだと知る。もちろん思い遣りからの発言だとわかっているのに、悲しさが広がる。
「勘違いしないで。誰の子でもいいわけじゃない。香澄ちゃんとの子どもが望めるかもしれないから、うれしいんだろ」
私と、智史さんの、子ども。ふたりの赤ちゃん。
「手術が嫌なら、無理にとは言わない。大前提として、香澄ちゃんが大切だから。それを忘れないで」
まだ想像できない未来に、彼の優しい言葉が重なる。
「俺がこれから過ごす日々に、香澄ちゃんがいるって信じてる」