陰謀のための結婚

 夕方になり、アパートまで送り届けられる。

 車から見る街の様子は、なんだか違って見えて新鮮だった。

 今まで外の景色を見る余裕がなかったから? それとも彼と一緒だから? はたまた彼との子どもも夢ではないと知れたから?

 次から次へと浮かんでくる考えに浸っていると、彼が驚く発言をした。

「父が言っていた『ふたりで障害を乗り越えれば』というのは、このことだったのか」

「どういう意味ですか?」

 ふたりが結婚する上で、私の体についてはたしかに障害だ。けれどそれを知っているのは、母と、それに三矢。

「三矢社長は父に、離れて暮らしている娘について相談したらしい。そこにたまたまフラフラしていた俺に白羽の矢が立った」

 三矢から聞いていた話と違う。城崎社長は、私の身の上を知っているの?

「三矢社長は俺との結婚話に不安を感じていたらしいが、もしも俺が結婚する気になれば、ふたりの間に障害があろうと必ず乗り越えるだろうと、父の方が強気で」

「そんなわけ、ありません」

「乗り越えられそうじゃないか。障害」

 智史さんは私が障害について言っているのだと思って、微笑んでいる。
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