陰謀のための結婚

 数日後、私は智史さんにお願いをして城崎リゾート東京ベイのイタリア料理店ベルカントに、ある人物を呼び出してもらっていた。

 会食を申し出たが、数分会うだけならと言われ、私もそれを承諾した。

 私と智史さんが待ち構える中、個室のドアを開け入ってきたのは三矢。

「お忙しい中、お呼び立てしてすみませんでした」

 智史さんが頭を下げると、片手を上げ「要件は手短に済ませてほしい」と淡々と告げた。

 三矢らしいと思いつつ、私は思いの丈をぶつけた。

「たくさんの方が私のためを思って、あなたの話をしてくださいました」

 目を閉じ、ひと呼吸置いてから、私が出した結論を話す。

「どんな話を聞かされても、私はあなたを父とは思えません」

 一瞬だけでも表情を曇らせるかと思ったけれど、三矢の表情は変わらない。

 予想通りの反応に、私は構わず続きを話した。
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