陰謀のための結婚
番外編:智史side 恋人の時間
彼女は待ち合わせで俺を見つけると、ふんわりと微笑む。近寄り難いほどの美人な彼女が、警戒心を解いた瞬間はいつ見ても心奪われる。
彼女の頬は、陶器のような透明感があり美しい。それなのに触れると柔らかで。つい頬に手を伸ばすと、肩を竦め恥ずかしそうに目を伏せる。
見た目のイメージとは違う初心な反応は、俺の心を掴んで離さない。
だから余計に、ふたりきりになると彼女に触れたくなる。
「香澄ちゃん、抱いていい?」
わざと声に出して確認をすると、彼女は小さく頷いた。
自分にしか見せない照れた顔をして、頬を薄く染める。
そっと唇を重ねると、彼女は俺の胸に顔を押し付けた。
「恥ずかしいです。その、久しぶりに智史さんの色気が全開だから」
俺は彼女を抱き締めながら、緩くため息をつく。
「それはそうでしょう。今まではそういう雰囲気にならないよう、自制してた」
「どうして」