陰謀のための結婚

「どんなって……。変な、人?」

 よほど期待をしていたらしく、玲奈は大袈裟に肩を落とす。

「なーんだ。香澄さんを腑抜けにさせちゃうんだもん。超絶イケメンな人かと思った」

「超絶って、すごい日本語」

 表現の仕方にフフッと笑う。

「で? なにがあったんですか?」

 追及の手は緩められる気配がない。玲奈から逃れるようにして、目元の書類に目を落としながら「玲奈はひと目惚れって信じる?」と質問をする。

「本当どうしちゃったんです? そんなのナンパの常套句じゃないですか」

 ナンパの、軽い気持ちで誘うときの常套句。

 玲奈に言われて、今まで声をかけてきた男性の台詞を思い出す。

『きみは運命の人だ』とか、『ひと目会ったときから恋に落ちた』とか、はたまた『雷に当たったみたいだ』とか。

 どれもこれも鳥肌が立ちそうな言葉ばかりを会って間もないどころか、すれ違っただけの男性に言われたりしてきた。

 我に返った気がして、苦笑を漏らす。
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