陰謀のための結婚
彼女は彼女なりに俺の変化に気づいていたようだが、それでも理由まではわからなかったらしい。
俺は彼女の肩に手を当てて、体から離すと髪を後ろに流しながら、彼女を見つめて言った。
彼女の瞳は不安げに揺れている。
「香澄ちゃんを傷つけたくないからね。体の変化に戸惑っているだろうし、なにより今の体で万が一妊娠した場合、流産の確率が高い。それを知って、俺を受け入れる心の準備も必要だろう?」
「それは、そうですけど」
「心配しないで。悲しい思いをするかもしれないとわかっていて、無責任な行動はしない」
彼女は俺から視線を外し彷徨わせてから、再び俺の胸に顔を埋めた。そしてか細い声を聞く。
「私は、不安だからこそ智史さんをもっと近くに感じたいって、思っていました」
思わぬ告白に、全身の毛が逆立った気がした。
堪らず首すじにキスを落とすと、彼女から甘い声が漏れた。
「もしかして不安にさせた? 俺も愛し合いたい。避妊するから安心して」
耳を真っ赤にさせた彼女は俺の体に顔を埋めたまま、コクリと頷いた。
「それならキスしよう。顔を見せてくれないとキスできない」
そう言いながら彼女の顔を覗き込み、唇を重ねた。