陰謀のための結婚
キスをして、服の上から体のラインをなぞる。身動ぐ彼女を捉え、肌に触れると彼女は甘い声を漏らす。
恥じらう余裕もなにもかもを奪うほどに愛した先で、誰も触れ得ない場所で重なり合った。
「待って、智史さん、まだ」
涙目で訴える彼女の表情が、俺の欲情を駆り立てる。
つながっているところから彼女の戸惑いがダイレクトに伝わってきて、思わず声を詰まらせる。
「もう嫌?」
甘い声で囁くと、彼女は頭を左右に振った。
「そういうわけじゃ、なくて」
吐息混じりに答え、俺の体に縋りつく。彼女の何気ない行動ひとつひとつが、愛おしくて堪らない。
「優しくするから」
頭にキスを落とし、強引に進めてしまいたい情欲をどうにか誤魔化して、彼女を抱きしめる。
華奢な体で精一杯、俺の背中に手を回して応えようとする彼女の健気な姿に、理性が削られていく。
「愛してる」
彼女の体に口づけを落とし、ベッドに体を沈ませると、深く愛し合っていった。
存分に愛を確かめ合ったあと、彼女はすぐに意識を手放すように眠ってしまった。
眠る横顔を眺めながら、ひとりつぶやく。
「また明日、叱られるかな」
彼女の髪を後ろに流しながら、苦笑する。柔らかな頬に指先を滑らせ、唇を重ねた。
「ん、智史さん」
寝言で名前を呼ばれ、幸せを噛み締めた。
番外編:fin.