陰謀のための結婚

「七月二日十九時、城崎(しろさき)リゾート東京ベイのイタリア料理店ベルカントにお越しください」

 蒸し暑い真夏の夜。父の代理人を名乗る人物から、連絡があった。帰り道に受けた電話は、アスファルトの先に見える蜃気楼のようだった。

 生き別れた。と言えば、聞こえがいいかもしれない。けれど実際のところ、私は私生児として生まれ育っている。父の顔は知らないし、会ったこともない。

 父と母は家柄の違いから周囲に猛反対され、私を身籠っていた母を、非情にも父は見捨てた。認知さえされなかった。
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