陰謀のための結婚

「もしかして、智史さんを悩ませているのは女性、ですか?」

「なんだ。悪いか」

 不貞腐れた声が出ると、直輝は笑う。

「つい最近まで女性に言い寄られて、うんざりだと頭を抱えていた人と同一人物に思えませんね」

 わざと茶化して言う直輝に、当たり前の思いをこぼす。

「気のない女性に言い寄られても、迷惑以外のなにものでもないだろ」

「そういうのを、イケメンの無駄遣いって言うんですよ」

 理解できない持論を展開する直輝に、呆れ声が出る。

「恋愛しか頭にないやつは、人生を無駄にしている。仕事や趣味、ほかにも女に(うつつ)を抜かすよりも有意義な過ごし方は別にある」

 いつもと変わらない考えを口にすると、直輝は楽しそうに言った。
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