陰謀のための結婚
黙っているのは嘘ではない?
仕事を終えると家に向かう。以前までは事務の仕事が終わったあとは、清掃の仕事をしていた。朝も仕事の前に、早朝にやるスーパーの品出しをしていた。
二人分の生活費を賄いながら、母の手術代を工面しようとすると、必然的に多く働く必要があった。
しかし倒れてからは母に止められていて、真っ直ぐ家に帰らなければ心配する。そのため、仕方なく事務以外の仕事は休んでいる。
それでも、いつまでも休んでいられない。長く休めば別の人がシフトに入り、自分が戻れる場所はなくなってしまう。
心を無にして、政略結婚を受け入れるつもりだった。そうすれば母は手術が受けられる。
けれど今は。
彼の姿を思い浮かべると胸が痛い。やはりどんな理由だろうと、人を騙していいわけがない。
改めて断ろうと決め、アパートの扉を開いた。