陰謀のための結婚

 少しすると若い感じのいい先生が来て、病状の説明を始めた。

「熱中症の症状は幸い軽いので、点滴でよくなると思います。腰椎のところの椎間板ヘルニアは前からですよね?」

「はい」

 腰を痛め、病院にかかった際に言われている。そして前回も言われた内容を告げられる。

「詳しい検査をしてみなければわかりませんが、急な痛みで倒れたようですし、手術も視野に入れてください」

 前回の問診では手足の痺れがあると答えたため、手術をした方がいいと勧められた。今回も痺れがあるといえば、より強く手術を勧められるだろう。

 しかし母は手術を嫌がっている。それはもちろん恐怖心もあるとは思うけれど、これ以上金銭面で苦労をかけたくないと考えているのだと思う。

 私のために我慢する母の姿は、見ていて辛い。安心して手術を受けられる環境を整えてあげたかった。

 熱中症もあるので、今回はこのまま念のため入院となり、手続きをする。

 手続きを済ませ、もう一度母のところに顔を出すと、母は起きていて看護師と話していた。私に気づき、頬を緩ませた。
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