陰謀のための結婚

 午後一時。西麻布にあるカフェで待ち合わせをして、城崎智史の車に乗る。車には詳しくないけれど、高級車なのは一目瞭然だった。

「三矢社長って西麻布に住んでいたんだっけ?」

『自宅まで迎えに行くよ』と言われたけれど、正体がバレてしまうため、高所得者が住んでいそうな場所を選んで『では、近くのカフェまでお願いします』と返事をした。

 カフェは《西麻布 お洒落なカフェ》とネットで検索したお店。行きつけのわけもなく、もちろん初めて行くカフェだったため、立ち振る舞いに変なところがないかドキマギした。

 実際に三矢が住んでいる場所など、知る由もないし、知りたくもなかったが、もしかしたら彼の方が知っていたかもしれない。

「今は一人暮らしをしているので」

「そっか。だから、自宅前までは迎えに行かせてもらえなかったんだな」

 どうにか納得してもらえたようで、ホッと息をつく。
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