陰謀のための結婚
「急の誘いに乗ってくれて嬉しいよ」
「ちょうど、暇でしてから」
「それはラッキーだったな」
夏の三連休。仮にも若い女性が予定がないと口にして、彼はどこまで信じているのかわからない。
彼からの誘いだったら、誰もがほかの予定を調整してでも応じるだろう。心の中では彼もそれがわかっているのかもしれないが、そこは深く聞かれなかった。
私の場合は母の腰の調子が悪かったため、母とゆっくり過ごすつもりだったから空いていたけれど。
「それにしてもメールで名乗らないなんて、なかなかの失態だ。初めてメールを送るのに緊張していたと言ったら、信じてくれる?」
信号待ちで停まった車。ハンドルに両腕を軽く乗せ、流し目でこちらを見られてドキリとする。日差しの下で見る彼は、まぶしくて見ていられない。