陰謀のための結婚

「本音が聞けるかと期待して」

「わ、私、なにか言いました?」

 記憶を辿っていると、彼の言葉で鮮明に蘇る。

「俺のうなじを見て、色っぽいなんて言うから、あと少しで振り返りそうになった」

 頬が熱くなり、顔を隠して抗議する。

「あ、あれは、だって、気が抜けて」

「あのまま襲って来られたら、甘んじて受け入れただろうけど、幻滅はしたかもね」

「それは、たまたまそうであっただけで」

「うん。本当は、きみになにをされても嫌いになれる自信がないよ」

 苦笑する彼は、意地悪な発言をする。

「俺がどんな奴かまだわからないうちから、俺に体を許すつもりだった?」

「それは、その」
< 74 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop