陰謀のための結婚

 言葉に困っている私を見て、彼は微笑んで言う。

「次は寝させないし、俺なしじゃいられない体にするから覚悟しておいて」

 胸元に人差し指をトンと当てられて、顔を赤らめる。

「次は剛鉄のスーツを着てきますから」

「ハハ。それはいいね」

 どんな硬い金属で覆われていようとも、彼に見つめられたら簡単に溶けてしまう様を想像して笑う。

「その顔、好きだな」

 目尻を下げたゆるゆるな表情で言われ、気恥ずかしい。

「また連絡するよ」

 彼の車が見えなくなるまで見送って、病院の中に入った。
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