陰謀のための結婚

「いい先生でよかったね」

「ヤダ。コルセットは奥住(おくずみ)さんが教えてくれたのよ」

「奥住さんって?」

 母が仲良くしている人で、その名前の人は初めて聞く。

「今度新しく仕事をしようって話している人よ。まだ香澄に話してなかったかしら」

 そうか。三矢が準備した人。

 本当にうれしそうに話す母に、心の中で懺悔する。

 ごめんね。仕組まれた人なの。

 それでも腰の調子がよくなって、母が前向きになれるのなら。いくら母が三矢を嫌悪していても、このまま黙っていようと思った。

 こんなときに『黙っているだけで、騙しているわけではない』という、三矢の言葉を思い出し、やっぱり同じ血が流れているのかな。と心の中で嘲笑した。
< 77 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop