陰謀のための結婚
「いい先生でよかったね」
「ヤダ。コルセットは奥住さんが教えてくれたのよ」
「奥住さんって?」
母が仲良くしている人で、その名前の人は初めて聞く。
「今度新しく仕事をしようって話している人よ。まだ香澄に話してなかったかしら」
そうか。三矢が準備した人。
本当にうれしそうに話す母に、心の中で懺悔する。
ごめんね。仕組まれた人なの。
それでも腰の調子がよくなって、母が前向きになれるのなら。いくら母が三矢を嫌悪していても、このまま黙っていようと思った。
こんなときに『黙っているだけで、騙しているわけではない』という、三矢の言葉を思い出し、やっぱり同じ血が流れているのかな。と心の中で嘲笑した。