陰謀のための結婚

 母とタクシーに乗り、アパートに帰る。古くて狭くても、やっぱり落ち着く我が家。

 母はコルセットをしていると、体調がいいせいか、明日にでも奥住さんと会うと言う。

「すごくいい人なのよ。お見舞いにも来てくれて」

 母のお見舞いもいかないで旅行に行っていた私は、罪悪感を感じながら話を聞いた。

「コルセットをわざわざ持ってきてくれてね」

「それで、どんな仕事をするの?」

「まだはっきりとは決まっていないんだけど、ゆくゆくはネイルの仕事をするわ」

 母は私を育てるためにたくさんの仕事をしてきた。最近やっていた仕事がネイリスト。センスのいい母にとても合っていた。

 ただ、その前の工場勤務をしていた際に腰を痛めていて、その腰が悪化したためにネイルの仕事を続けられなかった。
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