天敵御曹司はひたむき秘書を一途な愛で離さない
憂なき夜
「……なるほど。だから、君は俺を受け入れられなかったんだな」
父親たちをロビーに残して、ホテルの部屋に戻ってきた穂乃果は、もう一度拓巳に自分の口から事情を説明しなおした。
兄に反対されるというだけでなく、自分の家族のことを隠して、拓巳と仕事をしていたと思われるのが怖かったことも。
「ごめんなさい……」
ベッドに横並びに座り穂乃果は彼に謝った。あんな勘違いさえしなければ、ここ一カ月ほどのドタバタはなかったのに、と思う。誤解が解けたからそれでいいとも思えなかった。
副社長就任直後という大切な時期に、彼を振り回してしまったことも申し訳なく思った。
それなのに拓巳は、そんな穂乃果を優しくフォローしてくれる。
「いや、俺も君が二ノ宮不動産の娘だと知っていたことを言わなかったから」
「それは、仕方がないです。私はその方がありがたかったですし」
むしろそうしてくれたからこそ穂乃果はのびのびと働けたのだ。きっと彼は穂乃果を育てるためにあえて言わなかったのだろう。
「でもなんか、とにかく……ホッとしちゃった……」
呟くと穂乃果の視界がじわりと滲んだ。
「私、本当に拓巳さんと結婚できるんですよね?」
心の底からなんの憂いもなく彼を愛せるということが嬉しくて仕方なかった。彼と一緒になれるなら、家族と絶縁したっていいと一時は思ったけれど、やっぱり穂乃果は家族が大好きなのだから。
「もちろんだ。……穂乃果が俺のプロポーズを受けてくれるならの話だが」
「拓巳さん」
涙が溢れるのを感じながら、穂乃果は拓巳の胸に抱きついた。
「愛しています。私と結婚してください! 大好き……」
大きな背中に腕を回して、想いのたけを口にすると、力強く抱きしめられる。穂乃果の髪に口づけを落として拓巳がくすりと笑う気配がした。
「あの告白の時の勢いが戻ったな。それでこそ二ノ宮穂乃果だ。……愛してるよ。俺の妻は君しかいない」
そっと身を離して、拓巳が穂乃果の頬に手を当てる。その温もりが心地よくて穂乃果がうっとりと目を閉じると、唇を柔らかな温もりに塞がれる。
「ん……」
ちりちりと頭の片隅が痺れるのを穂乃果はこれ以上ないくらいに心地いい。
甘い感覚を残したまま唇はすぐに一旦離れる。
そして、もう一度。
なにも憂いのないキスは、こんなにも幸せな気持ちにさせてくれるものなのだ。告白した日の夜も、同じように感じたのかもしれないけれど、あの時は無我夢中で気持ちが通じ合えた喜びで、そこまでの余裕はなかった。
これ以上ないくらいの幸福感に穂乃果の身体は隅々まで満たされてゆく。
穂乃果を腕の中に閉じ込めたまま、拓巳が短いキスを繰り返す。
そのたびに、穂乃果の呼吸は温度を上げていく。
穂乃果の中の一番奥の感情が、もっと欲しいと言っている。優しいだけじゃない彼の触れ方をもう穂乃果は知っているから。
「あ……」
もどかしくて、切なくて、穂乃果の口から吐息が漏れる。僅かに開いた唇に、拓巳がすかさず侵入した。
「あ……んんんっ……!」
突如として、欲しかったものを惜しみなく与えられて穂乃果の身体は拓巳の腕の中で燃え上がる。自分でも止められない反応が身体のあちらこちらで起こるのを穂乃果は感じていた。
キスだけで。
彼のシャツを握り締めて、穂乃果は全身を衝動が駆け巡る感覚に耐えている。
穂乃果の中をいっぱいに満たしながら、触れてゆく彼の熱は全部、自分のものなのだ。この感触、温かさ、自分をおかしくさせる彼の動きは全て穂乃果のためにある。そんな幸せな事実が、穂乃果をいつもより燃え上がらせる。
彼の首に腕を回して、穂乃果は夢中で彼を求めた。
「ん、んっん」
「穂乃果、愛してるよ」
大きな手が穂乃果の身体を服の上から辿り出す。それすらも物足りなく感じてしまう自分が恥ずかしくて仕方がない。
「あ、拓巳さん、拓巳さん……!」
もっとたくさん触れてほしくて、穂乃果想いを込めて名を呼べば、それに応えるかのように優しくベッドに寝かされた。
父親たちをロビーに残して、ホテルの部屋に戻ってきた穂乃果は、もう一度拓巳に自分の口から事情を説明しなおした。
兄に反対されるというだけでなく、自分の家族のことを隠して、拓巳と仕事をしていたと思われるのが怖かったことも。
「ごめんなさい……」
ベッドに横並びに座り穂乃果は彼に謝った。あんな勘違いさえしなければ、ここ一カ月ほどのドタバタはなかったのに、と思う。誤解が解けたからそれでいいとも思えなかった。
副社長就任直後という大切な時期に、彼を振り回してしまったことも申し訳なく思った。
それなのに拓巳は、そんな穂乃果を優しくフォローしてくれる。
「いや、俺も君が二ノ宮不動産の娘だと知っていたことを言わなかったから」
「それは、仕方がないです。私はその方がありがたかったですし」
むしろそうしてくれたからこそ穂乃果はのびのびと働けたのだ。きっと彼は穂乃果を育てるためにあえて言わなかったのだろう。
「でもなんか、とにかく……ホッとしちゃった……」
呟くと穂乃果の視界がじわりと滲んだ。
「私、本当に拓巳さんと結婚できるんですよね?」
心の底からなんの憂いもなく彼を愛せるということが嬉しくて仕方なかった。彼と一緒になれるなら、家族と絶縁したっていいと一時は思ったけれど、やっぱり穂乃果は家族が大好きなのだから。
「もちろんだ。……穂乃果が俺のプロポーズを受けてくれるならの話だが」
「拓巳さん」
涙が溢れるのを感じながら、穂乃果は拓巳の胸に抱きついた。
「愛しています。私と結婚してください! 大好き……」
大きな背中に腕を回して、想いのたけを口にすると、力強く抱きしめられる。穂乃果の髪に口づけを落として拓巳がくすりと笑う気配がした。
「あの告白の時の勢いが戻ったな。それでこそ二ノ宮穂乃果だ。……愛してるよ。俺の妻は君しかいない」
そっと身を離して、拓巳が穂乃果の頬に手を当てる。その温もりが心地よくて穂乃果がうっとりと目を閉じると、唇を柔らかな温もりに塞がれる。
「ん……」
ちりちりと頭の片隅が痺れるのを穂乃果はこれ以上ないくらいに心地いい。
甘い感覚を残したまま唇はすぐに一旦離れる。
そして、もう一度。
なにも憂いのないキスは、こんなにも幸せな気持ちにさせてくれるものなのだ。告白した日の夜も、同じように感じたのかもしれないけれど、あの時は無我夢中で気持ちが通じ合えた喜びで、そこまでの余裕はなかった。
これ以上ないくらいの幸福感に穂乃果の身体は隅々まで満たされてゆく。
穂乃果を腕の中に閉じ込めたまま、拓巳が短いキスを繰り返す。
そのたびに、穂乃果の呼吸は温度を上げていく。
穂乃果の中の一番奥の感情が、もっと欲しいと言っている。優しいだけじゃない彼の触れ方をもう穂乃果は知っているから。
「あ……」
もどかしくて、切なくて、穂乃果の口から吐息が漏れる。僅かに開いた唇に、拓巳がすかさず侵入した。
「あ……んんんっ……!」
突如として、欲しかったものを惜しみなく与えられて穂乃果の身体は拓巳の腕の中で燃え上がる。自分でも止められない反応が身体のあちらこちらで起こるのを穂乃果は感じていた。
キスだけで。
彼のシャツを握り締めて、穂乃果は全身を衝動が駆け巡る感覚に耐えている。
穂乃果の中をいっぱいに満たしながら、触れてゆく彼の熱は全部、自分のものなのだ。この感触、温かさ、自分をおかしくさせる彼の動きは全て穂乃果のためにある。そんな幸せな事実が、穂乃果をいつもより燃え上がらせる。
彼の首に腕を回して、穂乃果は夢中で彼を求めた。
「ん、んっん」
「穂乃果、愛してるよ」
大きな手が穂乃果の身体を服の上から辿り出す。それすらも物足りなく感じてしまう自分が恥ずかしくて仕方がない。
「あ、拓巳さん、拓巳さん……!」
もっとたくさん触れてほしくて、穂乃果想いを込めて名を呼べば、それに応えるかのように優しくベッドに寝かされた。