腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
プロローグ
バスルームにシャワーの流れる音が反響していた。
シャワーを浴びようとしたところで、突然後ろから誰かに抱きしめられる。
驚いて後ろを向くと、悪びれない優しい笑顔の彼がそこにいた。
それにしても、突然、どうしたんだろう。でも、そうされることが嬉しくて私も微笑むと、キスをされた。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを繰り返す。
いつの間にか、シャワーの音は聞こえなくて、二人、夢中でキスを交わしていた。
振り向いた私の右手を彼の大きな左手が包む。
汗ばむ額にキスをされたあと、
「可愛い、もも」
目の前でまた彼が優しく微笑む。
いつも言われる『可愛い』とは全く違う音色の声に、胸の奥がきゅっと掴まれた気がした。
「ずっとこうしたかった。優しくするから」
思った通りの優しい手つきに目を瞑る。
あぁ、やっとだ。
本当にやっとこの日が来たんだ……。
気持ちよくて、身体がふわふわする。
でもどうしても眠くなって、そっと目を閉じた。
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