腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
少しして、先生は真剣な顔になると、私の両手をそっと取る。
「それで、これを知られてしまったからってわけじゃないけど……ももにお願いがあるんだ」
「……お、お願い……?」
先生に頼まれたことなら、喜んで何でもやるつもりだ。
しかし、この話を聞いて『頼みがある』と言われては、なんだか断りたい衝動に駆られる。
なのに先生は話をつづけた。
「僕はね、夜の僕が頻繁に現れたら困るんだ。今はほとんどがももの前だけみたいだけど、病院で楽しそうにオペされた日には……目も当てられないからね……。実際、オンコールで一度そういう場面があったみたいなんだ」
いつも優しくて、けがや病気に真摯に向き合う先生を見ていたみんなが、うきうきと楽しそうにオペするリク先生を見れば驚くことだろう。一番困るのは、次期病院長でもあるリク先生自身だが。夜の先生は『少々』強引で自由すぎる。
それに……。
「まぁ……私もあの先生が頻繁に現れたら正直言って困ります」
私は思わずつぶやいていた。
リク先生はそれを聞いて苦笑する。