腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 その日は日曜だったけど、先生はそのあと病院に行った。
 私は先生がいなくなると、なんだか初めてほっとしていた。

 そして、夜になっても先生はいつもどおり帰ってこない。

 12時の時計の音が鳴った時、まだ先生が帰ってこないことにまたほっとしている自分に気づく。

(きっと今日は病院に泊まりだろう)

 その時、先生の言葉を思い出す。


―――念のため、夜はできるだけ病院の仮眠室で眠ってたんだけど……。

―――僕だから、わかるんだ。僕は、ももじゃないとダメなんだろうって。


 リク先生はリク先生だ。やっぱり優しい。
 そんな先生が夜に出てくる人格のことで、ずっと悩んでたんだ……。

 それで私に助けて欲しいって、そう言ったのに、私は自分のことばかりで……。
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