腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 泣きたくないのに泣いてしまう。
 先生は、ご機嫌に微笑むと、私の涙を指で拭ってその指を妖艶に舐めとる。

「ん、おいしいね」

 なにがおいしいのだ、とまた泣いた私の身体にどんどんキスを落とし始めた。

(やだっ……やだけど……)

 じわじわとお腹の底から、恐怖だけではない感情が沸き起こってくる。
 少し乱暴な動作に、冷たい指先にまで、昨日色々と教え込まれた身体が勝手に反応を始める。

 それがやけに恥ずかしくって、私はなんとか話を始めた。
 無理矢理、思考をいつもの先生のことに持って行って……。

 考えてみれば、夜の先生ときちんと話ができるのは私だけかもしれないし。
< 109 / 218 >

この作品をシェア

pagetop