腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「……あなたには他の時間の記憶があるんですか?」
「ある。あっちはほとんどないみたいだけど」

 きっぱりと先生は言う。
 つまり、夜の先生は普段の先生の様子も知っているんだ。逆は知らないのに。


 そんなことを思っていると、先生は少し怒ったように眉を寄せて、

「あいつはね、善人面してこうしてこんなひどい本音を隠すために、本音だけを持つ僕を作ったんだ」

とはっきり告げる。

「え、えっと……」
「まぁ、ももだって、優しくて本音は隠してる僕の方が好きなんだもんね。もともとこんな性格だったら、好きにならなかったでしょ?」

 そう言われて、私は面食らう。
 私が好きになったのは……確かに、いつもの、つまり、本音を押し隠した先生だ。

 黙った私を見て、先生がさらに深く眉を寄せた。

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