腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 その声に顔面蒼白になった私を助けるように、
 先生のスマホの音が鳴り響いた。

「ちっ。オンコールか」

 先生は当たり前のようにまたキスをして、私の上を退いてくれた。
 服を整えながら、行ってきます、ともう一度キスをして、それから出て行く。

 私はそんな先生の後姿を見ながらぽつりとつぶやく。

「本音でも、患者さんは第一なんだよね……」

 舌打ちしながらも、患者さんのもとに向かう先生の後姿をみていると、私の胸はきゅ、と軋む音を立てた。

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