腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

―――ももだって、優しくて本音は隠してる僕の方が好きなんだもんね。

 なんだか夜の先生の言葉を思い出してしまってた。

「この講演会、一般の人でも参加できるんだね。精神医療に関することだって。あ、ほら、この先生、有名な精神科の先生じゃん。参加しようかしら」

 横で用紙を覗き込んだ室長が言う。

「ももちゃん?」
「はいっ」
「一緒に参加する?」
「はい」

 そう返事してから、自分がなにに返事をしたのか分からないまま、当日の待ち合わせ時間と場所が決まっていた。
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