腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 そしてその日に限ってあまり残業もなかった。
 まっすぐ家に帰るのにも、足踏みしてしまう。

 意味もなくゆっくりとロッカーに向かっていると、美奈さんが声をかけてくれた。

「もも、何してんの? 李久くんと仲直りはできた?」
「美奈さん!」
「あら、なんだか疲れてるわね。そういう時は、お肉よ、お肉! いい店できたのよ! 行きましょう」

 私の気持ちを察してくれたのか、美奈さんはそんなことを言う。
 私は頷いて、美奈さんについていくことにした。

< 117 / 218 >

この作品をシェア

pagetop