腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 私は水を飲み干すと、先生の方を見る。
 そうすると、昨夜、私が先生の右頬に昨日つけてしまった傷が目に入った。

 その傷にそっと触れる。

「こ……これ、ごめんなさい。私がつけちゃったんです」
「こっちこそ、ごめん。昨日、帰らないつもりだったのに、隙を見ていつのまにか帰ってきてたみたいで……。だからでしょ?」

 先生は優しく問う。
 私はそれに小さく頷く。

「ももには怪我はなかった?」
「はい、それは大丈夫です」

 私がもう一度頷くと、先生は、よかった、と心底ほっとした顔をした。

(やっぱりいつもの先生だ……)
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