腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 そう思ったとき、先生は私の頭を軽く撫で、

「遅くならないうちに病院に戻るよ」

とソファから立ち上がる。

 さっき帰ってきたばかりなのに……。オンコールもないのに……。
 ここで12時を過ぎるのを避けるためだろう。

 私はそんな先生と離れるのが惜しくて……
 思わず自分も立ち上がり、先生に手を広げて見せた。

「先生、ぎゅうってして」
「うん」

 先生はそっと、まるで壊れ物でも扱うように私を抱きしめる。
 私はその優しい感触にそっと目を瞑った。
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